職業・箱屋 箱を作るお仕事してます
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きっと誰も書かないだろうから
少し私が書いてみようと思います
歴史も規模も 箱屋とは比較するのも申し訳ないほどの建設会社が
主力にしていた住宅建設において
競争の激化から採算性が悪化し
資金繰りに行き詰まり
という結果の末 倒産しました
そこに至るまでにはどれほどの労苦と思索があったことか
それでも現実は
3行で書けるほどの言葉で説明が帰着する事案
箱屋とその建設会社との接点は
設計事務所の設計する住宅において
何度か入札相手として同じ土俵で戦ったことがあるという程度
そしてこれもまた比較にならないほどの価格差で箱屋は全敗
なぜそんなに安価で施工が出来るのだろうか
という疑問を解消出来ぬまま
いや疑問は解消出来ていても
そういう戦い方が出来ずに 入札では負け続けました
時代が連れて来た「競争の激化」は確かにあります
それは私たちのような極めて小規模の工務店にとり
毎日が「競争の激化」という台風であり
「採算性」という低気圧960hpと
「資金繰り」という瞬間最大風速50m/sに
吹き飛ばされないよう踏ん張りつつ
そんな中でも「良い箱を造る」ことを本業・本分とする稼業が
今の時代の建築業だと考えています
つまり 「競争の激化」に飲み込まれ
本分である「良い箱造り」に注力出来なくなった時点で
建築業としての機能は停止するわけで
他業種同様 こちらも
なかなかにハードボイルドな業界なのは言うまでもありません
さて
今 目の前に住宅の図面があるとして
これが適正な価格で施工されているかどうか
と考えた時
どの業界でも 安かろう良かろう の商品は存在し難く
特に膨大な人力を必要とする建築という作業に置いて
価格を下げることは すなわち人件費に直結するわけで
手間ひま掛けず省力化を追求した施工が出来ればいいのですが
目の前の住宅の図面には手間ひまの掛かる作業がてんこ盛りだったりすると
それだけで気圧は10hp下がり 風速は10m/s上がります
そんじゃあ 適正な価格とは? という話になるのですが
私たちが生息する
設計事務所が設計する家造り というジャンルにおいては
身も蓋も無い話で恐縮ですが 適正価格は各戸様々
ただ
適正な価格を知ろうともせずに 適正な価格の根拠も考えずに
設計をしてはいけないし 施工に関わってはいけません
膨大な量の人力を使うということは
膨大な量の知恵を借りられるということでもあります
私は
私の周りにいる多くの職人さんたちの知恵に守られているから
この台風の中に立っていられるのであり
その人達がご飯も食べられないような価格で仕事を請け負うことが
適正だとは思えません
その図面に書かれた一本の線に 何人の手が関わり
そこにどれだけの知恵を注ぐのか
現場に関わる人の手はタダではなく
全ての手に値段が付いているのであり
箱造りに関わる手の本数と知恵の総量が
その箱の適正価格であってほしいと願う者であります