職業・箱屋 箱を作るお仕事してます
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イカスミをそのまま塗り付けたような
真っ黒な玄関ポーチ
より黒く というリクエストに応えようと
左官屋さんは 工夫を凝らして挑戦をします
部材の配合に 当日の気温や湿度
下地の湿潤も関係あったでしょう
写真にも見て取れるように 日当たりの差の影響も大きく
その黒さから来る材料そのものの温度上昇も否定出来ません
諸条件考慮の末の施工でしたが
とにかくうまく仕上げることが出来ませんでした
左下隅に写る 心折れグッタリとした様子の左官屋くんは
私などが手前味噌を加える必要のない
確かな技術を持った職人さんです
その彼の判断を信頼した上で 失敗は失敗として受け止めて
次に彼がこの失敗をどうリカバリーしてくれるかを
私はとても楽しみにしています
私たちは紙一重のところで
失敗の恐れと向き合い共存する仕事をしています
事前にふせげる失敗を回避することは
すべてのお仕事の基本でありますが
失敗を恐れず挑戦することも 同じくらい
お仕事の基本だと思っています
楽しそうな小部屋を持つこちらの箱
外観はおおむねの形を見せ始め
各所多々 手の跡をたっぷりと残しつつ
幾多の打合せを盛り込みながら
完成へと進んでいます
これら写真に載せた各部の納まりが
現実の現場へ はめ込まれるまでに掛けられる時間は
それはもう 気の遠くなるほどで
まず設計者の元の図面があり
それを現場監督が施工図として
細かな寸法までを詰めた図面に表現します
その後 その施工図を再度設計者と調整しつつ
ともすればこの段階で違う案が出て来たりして
施工図を書き直したりして
もう一度打合せをしたりして
ようやく決まったところで材料を発注し
材料が届くのを待ち
届くまでの間 大工さんが施工図を読み取りながら
下地を造るなどの準備をし
材料が届いたところで
大工さんが加工を始めるのですが
施工図で寸法を詰めたつもりでも
現場で予期せぬことが起こったり
大工さんが加工を微調整したり
その経緯の後に出来る この窓枠1ヶ所
私はつい手を合わせて 拝んで しまうのです
3月24日まであと2週間
カウントダウンをするほどのことでもありませんが
現場見学会へお越しいただく皆さまのために
ここで今の現場の様子を
予習 していただきましょうか
外観は程よく形が表れ始めておりまして
ほう なるほど と
設計士氏も 納得のご様子
今の時期 外から見る箱の大きさと室内の広さに
少なからず感じる差異を
楽しんでいただけるかと思います
しかして 室内は
1月に開催しました現場見学会
告知期間の短さもあり大盛況とは言えませんでしたが
何より大切なのは継続とアピール
ということで
現場見学会 今年2回目
場所は愛知県高浜市
設計は 服部信康建築設計事務所
詳しくは 例によっての NEWS にて
さて今回の見どころは
世にも珍しい 思いっきり工事途中の見学会
世の中には構造見学会と称して
建前直後の骨組みや耐震システムをお見せしたり
特徴的な設備機器を披露したり
ワークショップという いかにもな名目で
一般人をタダでこき使う場を設けたり
つまり住宅の見学会と言えば
何らかの建築的なテーマを持って開催するケースが
ほとんどなのですが
何と今回はテーマ性 皆無の
旅の途中 ならぬ 現場の途中 をお見せします
開催日3月24日の頃は たぶんきっと
現場が工事期間中もっとも模索状態におちいっている頃のはず
イラつく大工
頭を抱える現場監督
飛び交う施工図
おびえる設備業者
そして 無慈悲な設計事務所
そんな現場の混沌とした姿が見られるのは
この見学会だけ
構造よりも設備よりもワークショップよりも
面白いと 私は思っています
どれだけ混沌としていようが
その中に射す一筋の光明を頼りに
同じ方向を向いて 現場を完成へ導こうとする
そんな勇者のごとき現場関係者の姿を 話を
一服いかがでしょうか
ところで
上に「混沌」と書きましたが
そもそも作り方も作るものも図面で決まっているはずなのに
何を今さら現場でゴタゴタと模索することがあるの?
と思った そこの貴方
この見学会に参加するとその疑問が解消され
家造りって スゲぇ と思えるようになりますよ